変形性膝関節症は、遺伝的や怪我を除けば、運動のし過ぎや加齢により、膝関節の軟骨がすり減って骨が変形してしまうことで起こります。
症状が進むと変形した部分が炎症を起こして、歩くたびズキッと強い痛みを発するようになり、さらに重症化すると歩くことも出来なくなってしまう事もあります。
膝に水が溜まるのも、炎症の反応の一部で水の中には,回復に必要な栄養や細胞が含まれていますが、ほとんどの場合抜いてしまいます。
潜在的な”変形性膝関節症予備軍”は沢山いる
関節の軟骨には血管が通っていない為、一度すり減るとほとんど再生しません。高齢者に多いのはその為で、若い年代に起こらない訳ではありません。若い時にはまだ軟骨部分の摩耗が少なく、変形の度合いが小さかったり、始まっていないだけなので潜在的な”変形性膝関節症予備軍”は沢山います。
多数派は膝の内側がすり減るO脚
変形性膝関節症で日本人に多いのが、膝が外側に大きく曲がるO脚のケースです。膝の内側に負担がかかり痛みを感じます。なぜ日本人はO脚になりやすいのでしょうか?
これは、骨盤がの角度、傾斜が後ろに傾く「後傾」が多いからです。よく駅で電車を待っていると、お腹を突き出してガニ股で立っている男性を見かけると思います。また腰を大きく前にずらして腰かける人もいるでしょう。
これはアジア人に良く見られる身体的な特徴で、体の後面の筋肉の発達の仕方にあるとも言われています。
欧米人は後面、アジア人は前面が発達
欧米人や黒人は、背部や腰部、お尻の筋肉や体幹を支える腸腰筋も強く発達しています。欧米人の写真を見ると、お尻がグッと上がって足がすらりと真っ直ぐに伸びています。
対してアジア人は、体の前面が発達してその筋肉を使う事が多いので、骨盤が後ろに倒れ、お腹を突き出し、肩を巻き込んだり猫背になりやすいのです。
ノコギリが西洋は押して、日本は引いて使うように作られているのも、筋骨格的な理由があると言われています。
骨盤が後傾すると、股関節が外側へ開いていく
先ほど「電車を待っていると、お腹を突き出してガニ股で立っている男性を見かけると思います」と書きましたが、これは正に骨盤が後傾し、股関節が外に向いている状態です。
こんな姿勢を常にとっていれば、体重を脚の外側ばかりにかけ、歩く時も股関節は外を向いたガニマタの状態です。
進行方向は前方なのに、膝は外を向き足が着地するたび膝の内側にダメージを与えてしまいます。
この骨盤の後傾と歩き方が、変形性膝関節症の大きな原因となっています。
骨盤の後傾は骨格の歪みを整える施術と姿勢の改善
骨盤の後傾は、主に股関節、大腿部、臀部、腰から背部、肩甲骨の可動域の拡大などが重要です。また骨盤の押し上がりによる左右差も大事なポイントで、傾斜角ばかりで左右差を軽んじると、押し上がっている側の股関節がより開いてしまいます。
骨盤の傾斜角、左右差をt改善しても、日常の立ち姿勢の調整も必要となり、必要最低限の筋力で立てるようにはある程度の時間、努力も必要です。
歩行動作の改善だけでも痛みは軽減できる
当院の患者様でも、膝の痛みで来院された患者様が、初回の歩行改善で、痛みが激減するケースが多数あります。
歩くときに気を付けたい4つのポイントを簡単に紹介します。
ポイント1. 最初の一歩は前に出すのではなく後ろへ地面を蹴る。
「歩く」というのは四肢を使って前方へ移動するという事。身体を前に進めるためには地面を蹴って反発力で進めるわけです。歩幅は欲張らずに楽に歩きやすい程度で。あまり大股になると力が入りやすく、地面からの反力も強くなり、膝や足首に負担となります。
ポイント2. 肘は後ろへ
日本人は歩くときに、腕を前に振り過ぎな傾向があります。脚は身体を進める為に地面を「後ろに蹴る」のです。腕も同じで肘は前方ではなく、後ろへ引くように意識しましょう。
ポイント3. 足先は内側でも外側でもなく真っ直ぐ前方へ
足幅は肩幅内で一足分くらいを空ける。足跡のイメージとしては自分の足幅のレールの上を移動するように。よく「カカトから着きなさい」と言いますが、着地では無く「接地」するように優しく。
ポイント4. 視線は20M先
歩きが不安定な方に多いのが、「視線が近い」ことです。視線が近いと重い頭部が下がりバランスが悪くなります。しかも手前しか見えないため、進行方向のさきの情報が乏しく、転倒や衝突などのリスクが高まります。 目安として20M先を見て歩きましょう。
骨盤の後傾を改善し、歩行動作を調整する事で変形性膝関節症は、改善、軽減する事は可能です。現在は手術の技術も発達していますが、手術は最後の手段として、さきに優れた手技療法と歩行の改善をお勧めします。